それは椿が指令により北海道支部に出張になったときより約1カ月たった10月初めのことだった。 場所は北海道支部のある箱館の五稜郭。 五稜郭はもともと松前藩の砦だったのだが時の幕府海軍副総裁・榎本武揚が占領し、そこで蝦夷共和国を 樹立したのだった。 何故榎本武揚は五稜郭を占拠したのだろうか? それは五稜郭の構造にある、五稜郭はその名の通り五角形の形をしていて五芒星を表わしており、 その霊的な力を利用してこの後攻めてくる官軍に対抗しようとしたのだった。 そして今は五稜郭の地下を帝国華撃団の支部として使っている、 なぜなら今開発している天武は霊子核機関を併用しており、 その実験のため都市エネルギーが必要であり、 それゆえ霊的な加護がある五稜郭を選んだのであった。 その五稜郭の地下で椿は天武の輸送のための作業をしていた。 「ああ〜ん、もう。何で三人の中でかすみさんや由里さんでなく私が選ばれたのかしら?」 珍しく椿が愚痴をこぼしている、 それも無理もない椿はここについて早々から働き詰めだったのだ。 朝は天武の輸送のための軍艦の手配、下見。 昼は天武の実験に立ち会い、チェックを行い。 夜は夜とて輸送のための綿密な打ち合わせがあるのだった。 それの繰り返しで休む暇さえないほど椿は働いていた。 「ほんとにもうイヤになっちゃう・・・」 「は〜ぁ、帝撃のみんなは元気にしてるかな・・・・、大神さん・・・・。」 椿がブツブツ言っていたそのとき誰かがポンと肩をたたいた、 「キャア〜〜〜〜〜〜〜!!!」 「おいおい、そんなに驚くことはないだろう。」 椿が驚いて前につんのめったその後ろにずいぶん恰幅のいい男が立っていた。 「あっ、トドさん。驚かさないでくださいよ〜。」 彼の名前は琴風平太、通称トドさんである。 そのアダ名の由来は・・・・見てのとおりの体形からである。 こう見えても彼はこの北海道支部の支部長なのである、彼はその竹を割ったような性格としっかりと座った肝でみんなから信頼されていた。 「おお、すまなかったな。そんなに驚くとはおもっとらんかったからな。ガッハッハッハッハ!」 「もう、気をつけてくださいよ。」 椿はその持ち前の明るく、親しみやすい性格から北海道支部の人たちとも親しくなれたのだが、 特に、トドさんとは実の親子のように接していたのだった。 「椿、最近疲れているんじゃないのか、たまにそんな風にブツブツ言ったりして。」 「いっ、いえ!そんなことないですよ!」 「そうか・・・、それならいいが・・・。」 「トドさんこそこんな所でサボっていないで早く仕事に戻ってください!天武を花やしき支部まで輸送するのに後二カ月しかないんですからね!」 そう、天武は12月の初旬に搬送する予定だった。 「おおっ!すっかり忘れとったわい。ガッハッハッハッハ!」 そんな会話をしていたそのとき、 トゥルルルー、トゥルルルー 「ん、これは何の音だ。」 「これはキネマトロンの音ですよ、もっ、もしかして帝都で何かがあったのかも!」 椿は険しい表情で急いでキネマトロンにでてみると、そこに写ったのは、 「やあ、椿ちゃんひさしぶりだね。」 「おっ、大神さん!!!」 そこに写ったのはまぎれもなく椿が心を寄せている人、大神一郎だったのだ。 「お久しぶりです、大神さん・・・。」 なかなかそれ以上の言葉がでてこない、 「うん、元気でやっていたかい?」 「はっ、はい!元気が私のとりえですもの。・・・・ところで大神さん、どうしてここのキネマトロンの番号がわかったんですか?」 「ああ、今さっき事務室にいったら由里くんがおしえてくれてね。」 「由里さんが・・・、もう由里さんたらおしゃべりなんだから。ところで大神さん私に何かご用ですか?」 「かすみくんと由里くんに言われたんだ、「椿は一人で北海道に行ったんだから今ごろさみしがっていますよ、ほんとに大神さんは鈍感なんだから。」ってね。」 大神は何故そんなことを言われたのかわからないと言う顔でそういった。 (かすみさん、由里さん・・・・。) 椿はかすみと由里に感謝していた、確かにいくら北海道支部の人に良くしてもらっているとは言えやっぱり帝劇とは雰囲気が違う、 特に大神に会えないことは椿にとってはとても耐え難いことだった。 「椿ちゃん、秘密任務だと言うから何も聞かないけど、がんばれよ。」 「は、はい!その言葉を胸に私、がんばります!」 心底からの言葉だった、この言葉を聞いて椿は元気が沸いてきたのだった。 「それでは大神さん、私まだ任務が残っていますので失礼しますね、また通信してください。」 「うん、それじゃあまた通信するね椿ちゃん、じゃあ。」 「はい!それじゃあ。」 (大神さん・・・、ありがとうございました・・・。) と感傷に浸っていると、 「ふ〜ん、今のが椿の恋人か?」 その感傷をぶち壊すかのようにトドさんが話しかけてきた。 「なっ、何言ってるんですか!おっ、大神さんは、たっ、ただの、はっ、花組の隊長さんで、あの〜、その〜。」 椿は突然そんなことを聞かれたのでしどろもどろになっていた。 「ガッハッハッハッハ!まんざらあてずっぽうでも無いらしいな。」 「もうトドさんたら。」 むくれる椿にトドさんは唐突に、 「椿、悪いが町まで行ってタバコを買ってきてくんねえか。」 「えっ、いいですけど確かトドさんまだ買い置きがたくさんあったはずじゃあ・・・。」 「ああそれならもう全部吸ってしまってのう、まあ今すぐじゃなくていいから明日一日かけてゆっくり買ってきてくれ。」 「トドさん・・・。」 彼は下手に芝居がかった口調で言った、 彼は彼なりに最近元気のなかった椿を心配してのことなのだろう。 「それからついでにいろんな所によってきてもいいぞ。その恋人の大神にも何か土産でも買ってきたほうがいいんじゃねえのか?」 真っ赤になる椿、そしてガッハッハと笑いながら去っていくトドさんであった。 そのときと同じくして、 「鬼王よ・・・。」 「はっ、これに。」 ここは赤坂地下の黒火会のアジト、その玉座に京極慶吾、その横に鬼王がひかえていた。 「水狐が残していった帝国華撃団の新しい霊子甲冑の情報の件どうなった。」 「はっ、その後その霊子甲冑は北海道に運ばれたそうです。」 「その霊子甲冑・・・、わが野望を邪魔する障害になるやもしれん、早々に排除せよ。」 「はっ、すでに木喰が開発途中の試作型降魔兵器を送り込みました、これはよい実験になるでしょう・・・。」 「そうか・・・、フッ、フッファファファファファ、フッファファファファファ!」 京極の不気味な笑い声が洞窟内に響くのであった。 その翌日、椿は箱館の町へ来ていた。 その日は何故か雪が降っていた、いくら北海道とは言え10月に雪が降るのは珍しい。 椿は厚着をしてまずは朝市へと向かった。 朝市とは箱館の新鮮な魚貝類や名産品などが集まっている市場である。(だと思う。) 「う〜ん、支配人はイカとっくりでいいだろうし、あとは・・・。」 他のみんなの分は買ったのだけれども、メインの大神に買うお土産がなかなか思いつかない、 しょうがないから歩きながら考えようということで椿は次の目的地、箱館山に向かうことにした。 箱館山に登ると目の前に一面雪に包まれた箱館の町が広がった。 本当はあの100万ドルの夜景といわれた箱館山の夜景を見たかったのだが、 これはこれで素晴らしい景色だった。 (この山の景色を大神さんと一緒に見ることができたらなぁ〜。) と、考えていたそのとき、 ドゴーーーーーーン!!!!! その音の衝撃で椿は倒れ込んでしまった。 「なっ、なにが起こったの!」 起き上がり町を見てみると五稜郭の方から煙が上っているのが見えたのであった。 <<後編に続く>> |