霊力を持つ少年、高原葉次郎。 彼は自分と同じ能力を持つ東弥介を見つけるも怪蒸気に襲われる。 絶命の危機に遭遇する葉次郎。 それを助けたのは月組隊長加山雄一(今は偽名『田中某』)。 かくて東弥介は帝劇入りし、葉次郎は修復なった道場で剣の稽古の日々をしばし過ごす。 ====================================== 『檄!!体験入隊前夜』 第2話「胎動」 ====================================== 話は九月一日から数週前にさかのぼる。 大帝国劇場、副支配人室。 藤枝あやめが加山雄一にとある資料を手渡していた。 頁をめくると、そこには数人の少年の克明なデータが記載されていた。 身長体重はもちろん、多岐にわたって記されていた。 それはまるで病院のカルテのようでも有った。 「副指令、これは一体・・・ただの健診結果ではないですよね?」 「ええ、そうよ。先日行われた帝都少年健診のデータでは有るけれどもね。」 「賢人機関が行ったピックアップ・・・ですか?」 「ご明察よ、加山君。」 更にさかのぼる事一ヶ月。 帝都では大々的に少年を対象とした健康診断が行われた。 『飛躍躍進ヲ期待サレル少年タチノ体力向上ヲ克明ニ記録ス』 と言う触れ込みで行われたものだった。 が、本格的に活動を始めた黒之巣会から強い霊力を持つ少年達を保護すると言うのが本題だった。 「そこで、月組で秘密裏に彼らの護衛を行なってもらいたいの。」 「了解しました。では数人で手分けをして任務に当たりましょう。」 「頼んだわよ。無益な戦いを、哀れな犠牲者を増やさないためにもね。」 「・・・はい。」 かくて月組隊員を召集した加山は資料を元に人員の割り振りを行なった。 本来の情報収集任務を疎かにも出来ず、人員の選出は加山の頭を悩ませた。 「残り四人、西城はこの少年、・・で原武はこの少年を、野口はこの少年を頼む。」 「「「はっ!!」」」 「さて・・・残る一人だが・・・・・仕方ない、オレが担当しよう。」 「なんともはや、人員不足は否めませんねぇ・・・・」 「必要以外の隊員は喋らないでくれ。名前を考慮するのに困るから。」 「ううう、ひどい・・・・(涙)」 改めて加山は担当する少年の名前と素性を確認した。 高原葉次郎、1907年12月26日生まれの15歳。 実家は築地の商家「高原商店」であり、主人の桐雄氏と菜理夫人の次男。 幼少より、桶町に有る千葉道場に入門して剣を学ぶ。 商才よりは体を動かす方に才が有る様子。 「桶町・・・俗に言う『小千葉』か・・・」 小千葉とは、北辰一刀流の開祖である千葉周作の弟、貞吉の道場の通称であった。 無論この時代には両者とも存命していないが、実力では小千葉が上だと言う話もあった。 閑話休題。 「剣の修練をしていると言う事は、あるいは霊力に気がついているかもな。」 「とすれば即戦力ですねぇ。」 「力石洸。」 「へ?」 「お前の名前だ。葉月さんに感謝して置けよ。」 「は?葉月さん・・・ですか?」 「いや、こっちの話だ。さて、では目標の彼の身辺に近づくとするか。」 かくて、調査されていた少年たちは月組の護衛を受ける事になる。 葉次郎も9月1日以前より監視されていたのだった。 しかし、東弥介に関しては天涯孤独の身であったので、この調査には参加していない。 故に帝撃にしてみれば、突然の掘り出し物であったと言えよう。 「うむ・・・どうやら彼で間違い無い・・のかな。」 護衛対象の少年、高原葉次郎に接近した加山は懐の写真を取り出し確認した。 写真でみるより、やや幼いような印象を受ける。 それは、間抜け面ではないが、どこか飄々とした表情がそうさせている様だった。 写真は顔のみでわからなかったが、服装は紺の着物に灰色の袴。 剣道の武具を背負ってはいるが、稽古着では無さそうだ。 そして足元にはブーツ。 和洋折衷の様を見て、どこかしら坂本竜馬を意識しているのか、とも取れた。 ただし、頭は髷を結っているわけではない。 「ん?そう言えば妙だな。」 先程から葉次郎を観察しているのだが、妙な違和感が有る。 よくよく考えてみれば、全然霊力を感じないのだ。 「どう言う事だ?まさか霊力をコントロールできるのか?」 しかし、その後駄菓子屋やらで寄り道した際に霊力を出したりしたところをみると、 コントロールと言うにはお粗末で、意識的に消す事だけ出来る様だった。 「とは言え、霊力に少なからず気がついていて、それを消せる・・・か。」 もしやすると、護衛のみならず、その先まで付き合いが続くかも知れない。 どちらかと言えば、厄介な仕事かと思っていたが、そうでも無さそうだ。 加山の表情にはうっすらと微笑みが浮かんでいた。 ====================================== そして、舞台は再び9月。 全壊したと思われた黒之巣会の日本橋地下本部。 無事であった一つの玄室に二つの影があった。 一方の長身で痩せ顔の男が、対峙する端正な顔立ちの少年と口論していた。 「だから今はまだ動くべきじゃねぇって。なあ、天雷よぉ?」 「何故そんな事が言えるのだ!!天海様の無念を思えばこそ、直ちに起つべきだ!!」 「そりゃオレも悔しいぜ?だが、今出て行ったって徒労に終わっちまうって。」 「黙れ風牙!元より貴様の力など借りようとは思わん!!」 「だからよぉ・・・」 「五月蝿い!!天海様直々に目をかけて頂いた恩に私は報ねばならんのだ!」 「へいへい・・・」 「脇侍の増産が済み次第、行動に移る。風牙、貴様とはここまでだ。」 踵を返すと天雷と呼ばれた少年は玄室を出て行ってしまった。 風牙と呼ばれた方の男はやれやれ、と言った顔で溜息をついていた。 「生真面目だねぇ、あいつもさ。ま、オレはオレで動くとするか。」 陰湿、と言うよりは不気味さすら覚えるような顔つきで独り言を続けた。 「まずは兵隊だ。脇侍だけじゃあどうにもならねぇ。霊力を妖力に・・・ククク・・・」 風牙もまた、その玄室から姿を消した。 翌日、黒之巣会の壊滅によって警護の解かれた少年が数人、姿を消した。 ====================================== □次回予告□ ちゃらーらーらーらーらーちゃっちゃーーーん♪(予告音楽だと思いねぇ) 数奇な運命によって帝国華撃団に体験入隊し、帝劇に住む事になった弥介。 引かれ合うように帝劇で、煉瓦亭で彼を目撃してしまう葉次郎。 されども彼らはまだ出会う事はかなわない。ドラマだなぁ〜、大神ぃ! 次回「檄!体験入隊前夜」 第三話「想い」 太正櫻に浪漫の嵐!!青春だなぁ〜〜♪ 「弥介くんと椿ちゃんって・・・・」 ちゃらっちゃちゃ、ちゃちゃん♪ |