時は太正15年、 京極との戦いも終わり、 次回の公演「夢のつづき」の用意にいそしんでいる頃の話である。 事務室ではいつものように休み時間を利用しての由里の噂話のワンマンショーが行われていた、 今日の題目は帝都でも最近話題になっているバレンタインデーの話、 そう、 今日は2月13日、 バレンタインデーの前日なのであった! SS「三人娘からのバレンタイン」 「・・・・というわけで明日はバレンタインデーなのよ!」 「バレンタインデーってなんなの、由里?」 「ええ!かすみさんバレンタインデーを知らないんですか!今帝都じゃこの話題で持ちきりですよ。」 あごに指をあてさもわからなそうなかすみに対し、 「そんなことも知らないの?」といった顔で驚いている由里の姿があった、 「しょうがないですね〜、それじゃ教えてあげますからしっかり聞いていてくださいね!」 由里は待ってましたといわんばかりにそう言った、 事実この瞬間が由里にとって一番の快感らしい(笑)、 「バレンタインというのは何でも西洋の風習で女の子が好きな人にチョコレートを渡して愛の告白をする日なんですって!くうう〜、ロマンチックですよね〜!」 ひとり悦に入っている由里を横目にかすみは少し押されぎみである。 するとそこへ、 「いらっしゃいませ!・・・じゃなかった、こんにちは!遊びに来ちゃいました。」 いつも元気いっぱいな椿がやってきた、 ご丁寧にお土産として実家のお煎餅を持ってきている、 「何のお話をしていたんですか、由里さん?」 「今話題のバレンタインデーについて話していたのよ。」 「バレンタインデーってあれですよね、2月の14日に仏壇の前に豚の丸焼きを供えてそのまわりを踊り狂う・・・。」 「椿・・・、その話どこから聞いたの?」 「えっ、違うんですか?さっき加山さんから聞いたんですけど・・・。」 「あ、あの男は・・・。」 由里の頭の中では加山がギターをかき鳴らしながら笑っている姿が見えていた、 「と、ともかくこんなビッグイベントを逃す手はないわ。私たちもみんなにチョコレートを作りましょうよ、日頃の感謝を込めて。」 この由里の提案にかすみと椿は、 「いいわね。でも由里、チョコレートの作り方なんてわかるの?」 「そうですよ、あたしお煎餅の作り方ならまだしもチョコレートなんて作れませんよ。」 その言葉に対し由里はチッチッチとあごの前で指を揺らし、 「この由里ちゃんの情報網を甘く見ないで欲しいわね〜。」 「どういうことなんですか?由里さん。」 「この前週刊誌でチョコレートの作り方の特集があったのよ!」 その雑誌を見せ由里が自慢げに話している、 「ね、これで大丈夫でしょ!何を作るのかもあたしが決めちゃったから。」 「何作るんですか〜、教えてくださいよ〜由里さん。」 しかし由里はもったいぶった様子を見せて、 「まだ秘密、明日になったら教えてあげる。」 「でも明日って、今日作っとかないと間に合わないんじゃないの?由里。」 「大丈夫ですよ、かすみさん。このチョコは明日の夕御飯のときにだすんですから。」 一人微笑んでいる由里、 かすみと椿は不安そうな顔をして見ている。 「さあ、そうと決まったら早速買い出しに行きましょうよ。」 「ええ、でも何を買ってくればいいの?」 「じゃあ材料をこれから言うわね。椿、メモしといて。」 椿がメモの用意をしている間に由里は雑誌を見て材料の確認をしている、 「それじゃ言うわね。ええと・・・。」 (ここからしばらく材料の名前がいっぱい出てくるので省略) 「・・・・以上よ、ちゃんと書いた?椿。」 「ええ、それにしても見たことも聞いたこともない材料ばっかりですね。」 椿は首をかしげるが由里は意に介さない、 「というわけでこの材料を買いに行きましょう。今の時期なら多分デパートで全部揃うと思いますから。」 「それじゃあ、支配人に言ってから行きましょう、由里。」 「そうですね。それじゃ行きましょう、由里さん、かすみさん。」 三人は支配人にちょっと買い物に行ってくると伝えにいった、 ちなみに支配人の「ついでに酒も買ってきちゃあくれねえか」という頼みはご丁寧に却下されたという。 かすみと椿は由里に連れられとあるデパートへとやってきた、 デパートは今日が土曜日ということもあり少し混雑していた。 「さあ、二人とも着いたわよ。」 「うわ〜、混んでますね、かすみさん、由里さん。」 「かすみさんも椿も迷子にならないようにしてくださいね。」 「ええ、ほら椿、はぐれないように私の手を掴んで。」 「もうかすみさんったら!あたしもう子どもじゃないんですから大丈夫ですよ。」 椿はむくれてそう言った、 「それよりも由里さん、食品売り場ってどこにあるんですか?」 「ええと・・・、どこだったかしら・・・。」 「ちょっと待ってあそこの壁に地図が掛けられてあるから見てくるわね。」 かすみは壁にかけてあったデパートの地図を見て食品売り場を探す、 「あったわ、ここを真っすぐ行ってつきあたりのエスカレーターを降りた地下一階ね。」 「それじゃ早く行きましょうよ!かすみさん、由里さん。」 三人はエスカレーターに乗り地下へと降りていった。 「うわあ、ここは女の子ばっかりですね!」 「バレンタインって本当に今帝都の話題になっているのね。」 「かすみさん、あたしの言ったことを信用していなかったの!」 由里がプンプン怒っている、 椿が全体を見回してみると一角に女の子がたくさん集まっている場所があった。 「あっ、チョコを売っているところってあそこじゃないですか?」 「たぶんそうね、行ってみましょうよかすみさん、椿。」 その場所へ行ってみるとさらに混雑していた、 人だかりの山ができていてチョコレートのところまで行けない、 「これじゃあチョコレート買えませんよ。どうします?」 「しょうがないわね、少し割り込ませてもらいましょう。」 かすみが意を決して人だかりの中へはいってゆく、 「すいません、そこ通らせてくれませんか?」 『ちょっと、押さないでよ!』 「本当にすいません、ちょっと通らせてください。」 『ちょっとやめてよ、おばさん!』 「お・ば・さ・ん?」 若いお客、ちょうど十代だろうかその少女がかすみにとっての禁句を言ってしまった! 「ちょっとそこの人、かすみさんにそんなこと言っちゃダメ!早く逃げて!」 「もう遅いわよ椿・・・。」 由里は冷静にそのことを告げた、 椿は半ベソの状態である。 ・・・・・・、 その後どうなったかというのはかすみさんの名誉のために伏せておこう、 その状況は椿の帰りぎわに泣きながらいった言葉「もうかすみさんとは二度と来たくない!」に集約されているだろう(笑)。 とうとう2月14日、 バレンタインデー当日である。 その日の午前中は花組は舞台の準備、 三人は事務、売店の仕事に追われ何事もなかったようだ。 ただし大神は薔薇組の三人に追われて大変だったようである。(笑) 午後三時、 ようやく仕事が一段落した三人は厨房へとやってきた。 「さて、それじゃあ早速チョコの下準備をしましょうか!」 「待ってくださいよ〜。その前に何のチョコを作るか教えてくださいよ〜!」 「そうよ由里、何を作るのかわからないと・・・。」 由里は「よくぞ聞いてくださった!」という顔をしてうれしそうな様子だ、 由里は左手を腰にあて右手は天井を指さしたポーズで言った、 「実はですね〜、今日作ろうと思うのは・・・。」 すると由里が指を指した天井からスルスルっと垂れ幕が落ちてくる、 その垂れ幕には何か文字が! 「じゃ〜ん、由里特製「チョコレートフォンデュ」で〜す!」 二人は唖然としている、 そもそも由里はいつの間にあんな垂れ幕を用意していたのだろうか? そんな疑問が二人の頭をよぎった。 「どうしたの、二人とも?」 「い、いえ!チョ、チョコレートはわかるけどフォンデュって何かなって、ねえ椿。」 「そ、そうなんですよ由里さん。」 そんな二人を見て由里は怪訝そうな顔をするがそんなことはお構いなしだ、 「二人とも教えて欲しいですか?フォンデュっていうのはですね〜、そもそも肉などを長いフォークにさしてそれを油の中に入れて熱を通し食べる料理なんですよ。有名なところではパンなどをチーズにつけて食べる「チーズフォンデュ」ってのがありますよね。」 由里は満足げな顔をして話している、 このように人が知らないことを話しているときが一番幸せらしい。 「そのフォンデュをチョコレートでやろうというんですよ。でもチョコレートフォンデュという料理はあるんですよね、ですからすこしアレンジしてやってみようと思うんです。」 「で、どうやってアレンジするつもりなの、由里。」 かすみがそうたずねる、 「ウフフ、チョコレートフォンデュをしゃぶしゃぶ風にやってみようと思うんです。」 「しゃぶしゃぶ風に・・・、ですか?」 椿はたずねた、 無理もないしゃぶしゃぶは薄切り肉を使う料理なのだからチョコに肉をつけて食べるというのはちょっと食べたくない。 「心配しなくても大丈夫、別に肉を使うわけじゃないから。」 「じゃあ、何を使うんですか?」 「うん、肉のかわりにクレープを使おうと思うのよ。」 「あ、なるほど!クレープならチョコにあいますよね。」 これにはかすみも椿も納得したようだ、 「さあ、二人とも早速チョコの下準備をしましょう!」 「ええ、それじゃあはじめましょうか。まず何をやればいいの、由里。」 「そうですね〜、そしたらまずかすみさんはチョコを湯せんで溶かしてください。椿は材料を切って。」 「はい、わかりました〜!」 三人ともそれぞれ作業にかかる、 かすみはチョコレートを溶かす作業、 椿は材料の果物(バナナ、イチゴ、キウイ)、パウンドケーキ、フランスパンなどを切る作業、 由里は二人の監視とメインのクレープを作っている。 「ああ、かすみさん!チョコを直火にかけちゃダメじゃないですか!」 「でもこっちの方が早く溶けるんじゃないの?」 「直火にかけたら焦げちゃうんです、それにチョコそのものの味が変わっちゃうんですよ!」 「え、そうなの!」 「もう、かすみさんったら意外と料理ができないんですね〜。それじゃあ教えてあげますよ。」 由里がチョコの入ったボールを持って説明する、 「いいですか、まずチョコを細かく刻むんです、チョコはちっちゃい方が溶けやすいですから。そしてボールにお湯を入れてもう一つのボールを浮かばせてその中にチョコを入れてその間接的な熱でチョコを溶かすんですよ。」 「へえ〜、そうなの。よく知ってるわね〜、由里。」 「えへへ、あたしお料理つくるの好きですから。」 そんなことを話しているとき、 ダダダッと廊下を走る音が聞こえてきた。 「みなさん、大神さんを見かけませんでしたか?」 「少尉はどこへいったのですの、教えなさい!」 「ア〜ンもう、少尉サンはどこいったデスカ〜!」 いきなりさくら、すみれ、織姫が厨房に駆け込んできて怒鳴りはじめた。 それに対し由里は、 「さくらさん、すみれさん、織姫さん。いっぺんに話されても何をいってるかわかりませんよ。」 「そ、そうですわね。それじゃあ代表してわたくしが・・・。事務の皆さん、少尉を見かけませんでしたこと?」 「お、大神さんですか?いいえ、今日はまだ見かけてませんでしたけど・・・。」 「そうデスか、それならこんなところに長居は無用デ〜ス!」 そのときさくらが大神を見つけたらしく、 「ああ、大神さんがロビーに!」 さくらのその一言でクモの子を散らしたように三人はロビーへととんでいった、 その後ロビーから「誰を選ぶんですか(ですの)(デスカ〜)!」という声と大神の「いいっ!」という叫び声が聞こえたのはいうまでもない。 「・・・・・嵐のようでしたね、かすみさん。」 「ええ、大神さん、大丈夫だといいんだけど・・・。」 大神に同情の念を寄せるかすみと由里、 その間も椿は一生懸命にフルーツを切っていたようだ、 どうやら椿は物事に集中すると他のことが見えなくなるらしい。 「ま、まあいいわ。作業の続きをしましょう。」 「それじゃあ、私は引き続きチョコを溶かしているわね。」 ふたたび作業に集中する三人、 しばらくして・・・。 「由里さん、材料を切り終えました〜!」 「こっちもチョコを溶かし終わったわよ。」 「よし、それじゃあ次の作業に移りましょうか。」 そうやって次の作業に移ろうとしたときにまた来客が、 紅蘭だ、 その手にはチョコレートが入っているであろう包みを持っている。 「こんにちは〜、三人ともこんなところで何してはるん?」 「あら、紅蘭。どうしたの。」 「いやな〜、ウチ、大神はんを探しとるんやけどどこにいるか知らへん?」 「さっき大神さんならロビーにいたけど、もういないかもしれないわよ。」 「そうか、ありがとな由里はん。ほなロビーに行ってみるわ。」 紅蘭は手を振りながら厨房を出ていった、 しばらくしてだろうか、 ドカーン! 二階から爆発音が聞こえたような気がしたがおそらく紅蘭だろうということで誰もそのことには触れなかった。 「ほら由里、早く作らないと夕食に間に合わなくなるわよ。」 「そうですよ、由里さん。早く作りましょうよ。」 「あ、もうそんな時間なんですか!」 由里が時計を見てみるともう午後4時半を過ぎていた、 帝劇の夕食の時間は五時頃だからあと30分しかない! 「大変!早くやっちゃわないと!」 「それでこれからどうするんですか?」 「ええ、あとはもう簡単だから!えっと、溶かしたチョコの中に生クリームを少しづづ加え混ぜ、最後に香りづけのリキュール酒を加え混ぜるのよ。」 三人のペースが早くなった、 もう時間はほとんどない。 由里は手早く指示を出し、 かすみと椿はその指示に従い動く。 「由里さん、生クリームとリキュール酒、どのくらい入れればいいんですか?」 「チョコを7、生クリームを4、リキュール酒を1の割合で入れて!かすみさんももっと手早くかきまぜて!」 「ええ、わかったわ!」 どんどん完成に近づいていく、 そして最後の仕上げ、 「この混ぜ合わさったチョコレートソースをお鍋の方に移して。」 「そして人肌よりちょっと熱い位に暖めて。」 「最後に薬味を添えてと。」 三人はお互いの顔を見合わせて、 由里がタイミングをとる。 「いくわよ、せーの!」 「「「かんせ〜い!!!」」」 ようやく完成、 三人の顔にも安堵感が広がる。 「椿、時間はどお?」 「ちょうど夕御飯の時間ですね。」 「それじゃあ、私が放送で皆さんを呼んでくるわね。」 かすみが放送でみんなを呼びに事務室へ向かった、 その間に由里と椿は食堂にでき上がったチョコレートフォンデュを運ぶ。 ピンポンパンポーン 「帝劇の皆さん、お手数ですが今すぐ食堂に集まってください。繰り返しお伝えいたします、帝劇の皆さん、お手数ですが今すぐ食堂に集まってください。以上帝劇三人娘からの連絡でした。」 ピンポンパンポーン 数分後。 大神や花組のみんな、米田支配人、かえでさん、加山や薔薇組の三人まで食堂へと集まった。 「三人とも・・・、一体どうしたんだい?」 大神が代表して三人にたずねる、 それに対し由里は、 「いいからいいから、大神さんも他の皆さんもとりあえず席に座って座って!」 由里に肩を押され席に着く大神、 それを見てみんなも席に着くのだった。 みんなが席に着いたところで三人が話しはじめる。 まず由里が、 「今日はバレンタインデーということで・・・。」 続いてかすみが、 「チョコレートに皆さんへの日頃の感謝を込めて・・・。」 最後に椿が、 「皆さんのためにチョコレート料理を作りました!」 そして三人一緒に、 「せーの!」 「「「私たち三人から皆さんに愛をこめて!」」」 <<了>> |
あとがき(座談会partU) かすみ「みなさん。」 由里「最後までお読みいただき。」 椿「ありがとうございま〜す!」 由里「なんか今回、筆者はこの話を書き終わったあと急に「宇宙から地球が見たくなった。」とかで今ここにはいません。」 かすみ「その代わりに手紙を残していきました。」 椿「かすみさん、どんな内容なんですか?」 かすみ「それじゃあ読むわね、え〜と「後は頼む。」だけだわ・・・。」 椿「もう、しょうがないですね!」 由里「そしたら三人でこのお話を振り返りましょうか?」 かすみ「そうしましょう。それではまずこのお話について何ですけど・・・。」 椿「筆者が言うにはバレンタインにかこつけて私たち三人のお料理をしている姿を書きたかったんですって。」 由里「役柄としてはあたしは情報通だけあって料理のことにも詳しく、作るのも好きという役。」 かすみ「私は料理ができそうだけど意外と料理下手な役・・・ですって!」 椿「あたしはそんなに上手いわけじゃないが一生懸命やっている姿は全国の男どもを魅了する役・・・ですって。」 由里「まあ、これも筆者の勝手な想像ですからあまり気にしないでくださいね。」 かすみ「それにしても由里、今回出てきたチョコレートフォンデュって何でこれを選んだの?」 由里「何でもあたしならチョコレートを作るっていってもそこら辺で知られている物は作らないだろうって、だから当時でも珍しいチョコレートフォンデュを選んだんですって。」 椿「へえ〜、そうなんですか。」 由里「ちなみに今回出てきたレシピは本当ですから、もしよかったら試してみてくださいね♪」 かすみ「筆者が試してみた結果ですから信用できるかどうかわかりませんけど・・・。」 椿「あまったチョコレートソースを牛乳でのばしてホットチョコレートにしてもおいしいですよ。」 おい。 かすみ「それにしても今回は私、すごいキャラになっていたわね。」 おい! 由里「しょうがないですよ。みんなかすみさんの年齢の話、期待しているんですから。」 おい〜!!! 由里「あら!筆者、何でここに?宇宙にいったはずじゃあ・・・。」 お前の田舎では急に後ろから羽交い締めにして簀巻きにして便所裏に捨てておくのが宇宙にいったというのか! 由里「えっ、違うの!」 違うわ〜!!!! かすみ「でももうこの座談会も終わりですよ。」 椿「ちょっと遅かったですね♪」 なにい〜!!!! かすみ「それでは時間となりました。」 由里「今回もこんなつたない話を読んでくれて。」 椿「本当にありがとうございました!」 かすみ「皆様への感謝をこめまして・・・。」 由里「あたしたち三人からのバレンタインチョコレートを送りたいと思います。」 椿「それでは皆さん、せーの!」 三人「私たち三人から全国の大神さんに愛をこめて!」 |