心の抱擁


それは帝劇の初舞台の練習中に起きた出来事だった。
すみれとカンナが舞台で喧嘩をしている、

「いい加減にしろよ、てめえ・・・・。」
「あ〜ら、カンナさん誰に口を聞いてらしゃるの?」

喧嘩の原因はこうだ、
すみれが稽古の途中にこの照明ではせっかくの美貌がだいなしだと言い始め、
それを聞いたカンナはついに堪忍袋の緒が切れて今までのすみれへの怒りをぶちまけたのだ、
その場はマリアの仲裁とアイリスの暴走で事なき?を得たのだった。
舞台袖ではかすみや由里(椿はまだ配属されていない)、あやめが心配そうにこの騒動を見ていたのだった。



<Scene:かすみ>

すみれさん・・・・。
私はそのあと事務室へ戻った、
由里がすみれさんは何故あんなに自分勝手なのかしらと言っていたが、
私は見てしまった、
すみれさんの舞台を出ていくときの寂しそうな瞳を。
すみれさんに何があったのかはわからない、
でも私はすみれさんの力になりたい、
そう思った私は、

「由里、悪いけどこの書類お願いね。」
「えっ、かすみさんどこへ行くんですか!」
「ごめんなさい、すぐ戻ってくるから。」
「かすみさ〜ん、それはないですよ〜。」

すみれさんどこにいるのかしら、
そういえば最近サロンが気に入ったって言っていたわね、
まずサロンに行ってみましょう。



いた!すみれさんだわ。

「すみれさん・・・。」
「あら、かすみさん。あなたもわたくしに注意をしに来たのですの。」
「えっ・・・。」
「・・・まあいいですわ、ご用件を伺いましょう。」
「すみれさん、一体どうなさったんですか急に機嫌を悪くなさったりして。」
「・・・・・・。」
「私でよければ相談に乗りますよ。」
「あなたもみなさんと・・・、みなさんと同じ事を言われますのね・・・。」
「・・・・・・。」
「もういいですの?それではわたくしは部屋に戻らさせていただきますわ。」
「すみれさん・・・。」

すみれさんは部屋へ戻ってしまった。
どうしたのだろう、
いつもそうだ、
今日のようにカンナさんとぶつかりあったとき、
マリアさんに注意されたとき、
いつも寂しそうな瞳をする、
そして今も。
私にはどうすることもできないのだろうか、
すみれさんの心からの笑顔が見たい、
同じ帝劇の仲間として、

「あら、かすみどうしたの?」

ふいに声をかけられた、

「あやめさん・・・。」
「どうやら何か悩み事のようね。」
「・・・・すみれさんのことなんです。」

それから私はあやめさんにすみれさんのことを、
すみれさんを元気づけてあげるにはどうしたらいいのか、
思いの丈を話した。

「・・・そうだったの。」
「あやめさん・・・、私は・・・、わたしはどうしたらいいんでしょう。」
「かすみ、すみれはね孤独なのよ、だけどもプライドの高さゆえに自分の気持ちとは裏腹な行動にでてしまうのよ。」

あやめさんは語ってくれた、
何故すみれさんがああいう行動にでてしまうかということを、

「すみれは幼い頃、英才教育として厳しくしつけられたの。そしてあまりにも忙しい両親に甘えることもできない、その孤独感が今もトラウマとして残っているのよ。」

どこかを見つめ悲しそうな顔をしてあやめさんは私に語りかける、

「そして今まですみれは自分を自分としてじゃなく、神崎家の娘としてしかまわりに見てもらえなかった。それがすみれにさらなる心の仮面をかぶせてしまったの。」
「・・・・・・・・。」
「かすみ、すみれには心から信用しあえる仲間が必要なのよ。でも今はマリアやカンナでは話を聞くよりさきにすみれが反発してしまう、アイリスでは話は聞いてくれるかもしれないけど取り合ってくれないでしょう。」

あやめさんは私の目を見つめて、

「あなたがすみれの寂しさを取り除いてあげて、あなたは一人じゃない、みんながいるんだからって教えてあげて。」
「・・・・私にできるのでしょうか?」
「自信を持って、いつものかすみらしく接してあげて・・・、ネッ。」

あやめさんは微笑みを浮かべ私にそう言ってくれた、

「・・・はい!」
「ウフフ・・・、よろしい。じゃあかすみお願いね。」

そう言い残すとあやめさんは去っていった。
いつもの私らしくか・・・。

「あっ、いけない!」

由里に書類を押しつけたまますっかり忘れていたわ、
今ごろ由里怒っているかしら、
すぐに戻らないと!
すみれさんと話をするのは仕事が終わった後にしましょう。



ふう、ようやく仕事が終わったけどずいぶん遅くなってしまったわね、
由里がお願いねって言っておいた書類全然手をつけといてくれなかったんだもの、
それで由里ったら、

「かすみさん、途中でいなくなっちゃたんですからその分のお仕事やっといてくださいね!」

って先に帰っちゃうんですもの。
すみれさん、まだ起きていらっしゃるかしら?
ギシ!
あら、何の音かしら?
舞台の方から聞こえたはずだけど、
気味が悪いわねちょっと見に行ってみましょう・・・・。





<Scene:すみれ>

ふん、なんですのあの唐変木は!
あんな稽古につきあうなんて辛抱たまりませんわ、
・・・・でもわたくしは何故あんなに反発してしまったのでしょう?
あのときはそんなに気にくわないわけではなかった、
何故・・・・・。
ま、まあいいですわ!
気ばらしにサロンにでも行ってお紅茶をいただこうかしら、
この帝劇の中でサロンはまあまあましな所ですから。



わたくしがいれたてのダージリンティーをいただいているときのことでしたわ、

「すみれ。」

誰かしら、せっかく人がいい気分でお紅茶をいただいているところに、

「あら、マリアさん。何かご用ですの?」
「一体今日はどうしたっていうの?」
「・・・いつもと何も変わりありませんわ。」
「何か悩み事でもあるの?もし良かったら相談に乗るわよ。」
「・・・マリアさん、わたくしは忙しいんですの。良かったらこれぐらいにしてくださる?」
「すみれ・・・。」
「早く、どこかに行ってくださいな!」
「・・・わかったわ。」

マリアさんはサロンから出ていってしまいましたわ、
・・・今もそう、
マリアさんがわたくしを気遣って、
わたくしのことを思い言いに来てくれたことはわかりますわ、
でも素直に返事ができない・・・・。



「すみれさん・・・。」

またですの、今日はずいぶんと来客が多いですこと。

「あら、かすみさん。あなたもわたくしに注意をしに来たのですの。」
「えっ・・・。」
「・・・まあいいですわ、ご用件を伺いましょう。」
「すみれさん、一体どうなさったんですか急に機嫌を悪くなさったりして。」
「・・・・・・。」
「私でよければ相談に乗りますよ。」
「あなたもみなさんと・・・、みなさんと同じ事を言われますのね・・・。」
「・・・・・・。」
「もういいですの?それではわたくしは部屋に戻らさせていただきますわ。」
「すみれさん・・・。」

わたくしはおもわず部屋へ向かい走っていましたわ、
こんな自分が嫌になる、
素直になれない自分が、
そして心を決して表に出すことのできない自分が・・・・。

バタン!
ドアを思いっきり閉めわたくしはベッドに寄りかかりましたわ、
深い自己嫌悪に陥っていました、
そしていつの間にか眠りについていましたわ。



「すみれ。」「すみれさん。」

(お父様、お母様!)

「さあこっちへ来なさい。」「おいでなさい、すみれさん。」

(はい、今行きますわ!お父様、お母様!)
だが二人は遠ざかっていく、
(どこへいくの?お父様、お母様。)

「すみれ。」「すみれさん。」

(待って、いかないで!)
すみれはその悲しげな瞳から大粒の涙をこぼしている、

「すみれ。」「すみれさん。」

(もう独りぼっちになるのは嫌ですの!ひとりにしないで!)
やがて二人は見えなくなる、
(いやー!お父様、お母様ーっ!!!)



ハッ!
夢、夢だったんですの?
いつの間にかに眠っていたようですわね、
頬を触ってみると暖かいものを感じましたわ、
涙・・・・、
わたくしは泣いていたのですの?
その涙は暖かいはずなのにいつもより冷たく感じましたわ。
今は何時なのかしら・・・、
22時ですの・・・。
そうですわね気晴らしに舞台へ行って舞の練習でもしましょうかしら、
ちょうど今日のお稽古も途中で中断してしまいましたし、
それに何だか体を動かしたい気分ですから。



誰もいませんですわね・・・?
こんなところ誰にも見られたくありませんし、
それでわお稽古をはじめましょうか・・・・。





<Scene:そして・・・・>

すみれが舞台で稽古をしていたその時かすみがその音を聞き何事かと思い舞台袖に顔を見せたのであった。

「すみれさん・・・!」
「きゃ!」

すみれは稽古に集中していたせいかかすみが接近していたことに気づいていなかった、

「な、なんですのかすみさん!」
「いえ、こんな夜中に舞台から物音がしていたもので見にきたんです。」

すみれはばつの悪そうな顔をしていた、

「すみれさん、お稽古中だったんですか?」
「何を言ってらっしゃるのかしら、わたくしにはお稽古など必要ないですわ!」

そう言い残してすみれが立ち去ろうとしていたときかすみが、

「待ってください、すみれさん!」
「なんですの、まだわたくしに用でもありますの。」

少し間をおいてかすみが、

「すみれさん、私の話を聞いてください。」
「だからなんなんですの。」
「近頃のすみれさんを見ていると時々すごく寂しそうな瞳を見せることがあるんです・・・。」

すみれはかすみの方に振り向き近づいて来た、
かすみは真剣な面持ちで言う、

「すみれさん・・・・、本当は寂しいんじゃないですか?」

すみれの顔がどんどん紅潮していくそして、
パン!
すみれはかすみの頬を平手で叩いていた、

「あなたにわたくしの何がわかって!」

すみれはなおも続ける、

「あなたは今まで親の愛、人の愛に溢れて過ごしてきたのでしょう。そんなあなたに何が・・・・。」

すみれはその瞳から涙をこぼし最後の方は言葉にならない、
かすみはそんなすみれを見つめ、
パン!
今度はかすみがすみれの頬を叩いた、

「えっ・・・!」
「確かに私にあなたの事は何もわからないかもしれない、でもあなたを心配することさえも許されないの?」
「かすみさん・・・。」
「ただ私はあなたが心配なのそれだけじゃいけないの?」

かすみはすみれを優しく抱きしめる、      

「大丈夫、何も寂しがることはないのよ。私は、いえ帝劇のみんなはあなたの仲間ですもの。」
「・・・かすみさん。」

すみれはかすみの胸の中で泣き続けた、
まるで子どもが母親に抱かれ泣いているように・・・・。



十分後、すみれはいつもの落ち着きを取り戻していた、
かすみはそんなすみれを優しい目で見つめていた。

「かすみさん、このことはみなさんには黙っていてくださいませんかしら。」
「はい、わかりました。すみれさん。」

二人はいっしょに舞台を降りていく、
その姿はまるで姉妹のように見えたのは気のせいなのだろうか・・・。





<<了>>





あとがき(座談会)で〜す!

はい、みなさんこんにちは!お読み下さって本当にありがとうございました。
かすみ「今回のお話はOVAの二巻のときのお話だそうです。」
すみれ「少しネタばれが入ってしまいましたのでまだOVAを観ていらっしゃらない方には申し訳なく思っていますことよ。」
今回はかすみさんとすみれさんの大喧嘩したらしいという噂のエピソードを書いてみました。
かすみ「まあ、なにぶん筆者の勝手な想像ですからご容赦くださいね。」
すみれ「それにしてもこのお話はなんですの?」
いや〜あ、サクラ大戦前夜の一巻をよんでいてね、
すみれちゃんは『精神的な抱擁』を欲しているという感じがあったんです、
そこでこれをすみれちゃんとかすみさんの大喧嘩の話にくっつけたんだ。
だけども本来ならすみれちゃんの相手役は花組の誰かの方がいいかなとも思ったんだけど、
当時の彼女たちには荷が重いような気がして、
それならばあやめさんはとも思ったんだけど、
あやめさんだったらこの事はみんなに任せてそれを温かく見守っているような気がしたんだ、
だからあやめさんにはかすみさんに助言を与える役に回ってもらったんだよ。
かすみさんを選んだのは当時なら一番あやめさん以外でみんなのことを思ってあげられる人かなってね。
すみれ「へえ、意外と考えていましたのね!」
えっへん!
かすみ「でも行き当たりばったりという感じもありますけど。」
ぎくう!
すみれ「なんですの?今の反応は。」
べ、別に〜♪
かすみ「あやしいですね〜。」
すみれ「もしかして本当にそうでしたの?」
い、いや、あのね!
すみれ&かすみ「「どうなんですの(ですか)!」」
な、なにまた何か持ってる!
それでどうするつもりなの!
い、いや!
またこのパターンなの〜!!!!





すみれ「筆者がまたインフルエンザの再発で入院してしまいましたので。」
かすみ「これにてお別れです。」
すみれ「なんだか次回はバレンタインの話を書いてみたいといっていますけども・・・。」
かすみ「この筆者は遅筆ですからね、間に合うかどうか・・・・。」
すみれ「でもいいですわ、それじゃあ。」
かすみ「このアイデアをくださったラムセスさんに感謝しつつ。」
すみれ&かすみ「「またおあいしましょ〜!」」

幕が閉じる、
そして今ごろ救急車の音が・・・・。
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