さよなら、かえでさん(後半)
前半の続き

『感じるでしょう、かえで。あなたを包む暖かい力を。
 今にもくじけそうな人や、どうしようもない状況に押し潰されそうな人の魂に、再び火をともす力。
 人が人を思いやる力。それは、愛の力!
 それが「でこつん」の本当の力なの。
 さあ、かえで。あなたがみんなから貰ったこの力を、今度はあなたが大神くんにあげるのよ。』

(あやめ姉さん!・・・わかった。わたし今こそわかったわ!!
 今までのわたしは、形にばかりこだわって本当に大切なことを理解していなかった。
 でも、今は違うっ!!
 見ていてあやめ姉さん。かえでは今こそ、姉さんの残した全てのものを受け継いで見せます!!)

新たな決意とともに大神に向き直るかえで。その瞳にはもはや微塵の迷いもない。

(かえでさん!?なんて・・・なんて澄んだ目をしているんだっ!!)

魂の奥底まで見通すようなその瞳の前に、大神は全ての動きを封じられた。

「大神くん。」
「は、はいっ!!」
「フランスに行っても、帝撃で学んだこと忘れないでね。」
「はいっ!!」
「よろしい。しっかりね、大神くん。」

・・・・・つん

静かで、そして余りにも自然なその動きに、そこにいた誰もが何が起こったのかしばらく理解できなかった。
つつかれた大神も、つついたかえででさえも・・・

・・・・・・・・・・。

「・・・できた。」
「・・・・・はい。」
「できたわ!大神くんっ!!わたし遂にできたのね!?」
「はいっ!かえでさんっ!!」

うおおおおおおおおぉぉぉ〜〜〜〜っ!!

大神の言葉とともに、それまで以上の歓声が波止場を包む。

「やったな!姉ちゃん!!」
「お嬢さん、よくやった!!」
「おめでとう!かえでさんっ!!」
「おめでとう!!」「おめでとう!」「おめでとうっ!」「おめでとーっ!」「おめでとう」

万雷の拍手と、舞い散る紙吹雪。
人々の歓喜の声に包まれかえでは、いやそこにいる全ての人は、頬を伝う熱い涙を止めることができなかった。

「お嬢さん!これを受け取って下さいっ!!」

突然、見知らぬ男性が差し出した花束。
戸惑いながらもそれを受け取ったかえでに、さらに多くの人々が次々と花束を差し出す。

「みなさん・・・!」

自分を祝福してくれる全ての人に感謝の言葉をかけるため、かえでは目の前の階段を一気にかけ登った。
そしてゆっくりと振り返り、静かに言葉を紡ぎ出す。

「みなさん・・・
 わたしはみなさんの事を何も知りません。
 どこに住んでいるのかも。なんという名前なのかも・・・。
 でもみなさんの声援が、思いやりの心が、そして何より大きな愛が!わたしに力を与えて下さいました。
 わたし、今日のことは一生忘れません。
 みなさん!本当にありがとうございましたっ!!」

ボーーーーーーーーーーッ!!

挨拶の終わりと共に、かえでの新たな一歩を祝うかのように汽笛がなる。

「いいぞーーーーっ!!」
「これからもしっかりやれよーーーっ!!」
「げんきでねーーーーっ!!」
「かえでさーーーーーんっ!!」
かえで!!かえで!!かえで!!かえで!!かえで!!かえで!!かえで!!か・・・・・・

かけがえのない仲間たちと、見知らぬ、だが優しい人々の声に見送られ、かえでは徐々に小さくなっていくその姿に、いつまでも手を振り続けていた。

・・・・・いつまでも。

・・・いつまでも。

心の迷路のその先に、遥かに広がる水平線。

さようなら、かえで!
ありがとう、かえで!!

僕らの帝撃副指令よ永遠にっ!!

(完)


「・・・いいんですか、大神さん?」
「いいさ・・・俺にはみんながいる。大切なみんなが・・・ね。」
「いえ、そうじゃなくて!!
 留学、どうするんです。船出ちゃいましたけど。」
「え・・・・・・・
 あぁ〜〜〜〜〜っ!!その船待て〜〜〜〜〜っ!!」

おしまい。
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