がんばれ、かえでさん
短い夏休みも終わって、いつもの日常が戻ってきた大帝国劇場。
大神一郎は今日も夜の見回りをしていた。

「上も一通りまわったし、次は地下でもみておくか。」

階段を降り、地下倉庫の前を通り過ぎたその時、大神は前方から吹き出す凄まじい霊気を感じとった。

「なんだっ!・・・鍛錬室からかっ!?」

カチャリ・・・

(中で一体何が?・・・あれはっ!?)

中にいる者に気付かれぬよう、細めに開けたドアの隙間から部屋を覗いた大神の見たものは、木人と呼ばれる鍛錬用具の前に立つ、藤枝かえで副指令の姿だった。

「すぅぅぅぅ〜〜〜〜〜。
 はぁぁぁぁ〜〜〜〜〜。
 すぅぅぅ・・・・・・」

静かな、しかし十分な力のこもった呼吸を繰り返すかえで。
その表情はいつもの穏やかなそれとはちがい、眼前に立ちふさがる全てのものを打ち砕かんとするような、強烈な闘気に満ちていた。

(かえでさん、いったいなにを・・・?
 まさかっ!黒鬼会との闘いに、ご自身も討って出られるおつもりじゃ!?)

たしかにかえでの実力ならば、戦力としては申し分ない。
・・・しかし

(しかし、副指令であるかえでさんに、そんな危険なことをさせるわけにはいかない!
 もしそのつもりなら、何としても止めなければっ!!)

決意を固めた大神が、部屋に飛び込もうとしたその時。かえでの霊気がさらに大きく膨れあがった!

「!!」

無言の気合いとともに、右手を木人の頭部に向かってえぐりこむように突き出す!!
そしてっ・・・!!

「うふっ・・・しっかり。隊・長・さん。」

つん・・・。

・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・。

「あぁっ!だめだわっ!!
 こんなのじゃ、とても姉さんには追いつけないっ!!」
「でも帝撃の副指令として、これだけは何としてもマスターしなくてはっ!!
 みててあやめ姉さんっ!わたしきっと出来るようになって見せるわっ!!」

長く険しい修行の道に、遥かに望む姉の影。

がんばれ、かえで!
負けるな、かえで!!

ゆけゆけ僕らの帝撃副指令っ!!

「・・・見なかったことにしよっと。」

 おしまい。
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