『慟哭〜サクラ大戦前夜より〜』


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パタン・・・

 乾いた音を立ててドアが閉まる。

(まるで今の俺の心みたいだな・・・。)

 奇妙な共感を感じ、彼”バレンチーノフ=ウラジミール・アレクサンドロビッチ”の口元に苦笑が浮かぶ。
 だが、それも一瞬のことだ。

(マリア・・・・・・・。)

 自分でも未練がましいと思いながら、今し方出てきたドアを振り返る。その向こうにはマリア・タチバナがいる。
 故郷を捨て異国へと流れてきた彼にとって、彼女だけが最後の切り札になるはずだった。

(今日は駄目だったが・・・・次は必ず・・・。)

 頼る者のいないこの国で彼がのし上がるためには、あらゆる手段を使わなければならない。例えそれが親子兄弟であろうとも利用できるものは利用する。
 そう、あの時のように・・・・・・。

(ユーリー・・・か。)

 それはかつての戦友であり、マリアがただ一人愛した男の名。
 そして、彼が罠にかけ殺した男でもある。

(今度こそ俺はうまくやって見せる!!)

 苦い思いを噛み殺し、立ち去ろうとしたその時。

カチリ・・・

 ドアの開く小さな音が聞こえた。

「!?」

 肩越しに振り返った彼の目に、ドアに身を隠すようにして、彼の背中を見つめるマリアの姿が写る。

「マリア・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・。」

 無言で見つめる彼女の目には、哀しみとも憐れみともつかない光が揺れている。

「・・・・・・・・マリア。」
「バレンチーノフ少尉・・・・・。」

 数瞬の沈黙の後、ためらいながらマリアが口を開く。

「少尉・・・あンた・・・。」
「?」
「背中が煤けてるぜ。」
「!?」
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
パタン・・・・

 呆然と立ち尽くす彼を残して、静かにドアが閉まる。

「マ・・・マリア・・・。」

 掠れる声で彼女の名を呼んだ瞬間、狂おしいまでに激しい思いが、彼の口からほとばしり出た。

「マリアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
 くれやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
 お前の運をワシにくれやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

(おわり)

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