『慟哭〜サクラ大戦前夜より〜』【まいどぉさんのSS目次へ】 【書棚TOPへ】 【メインページへ戻る】 |
パタン・・・ 乾いた音を立ててドアが閉まる。 (まるで今の俺の心みたいだな・・・。) 奇妙な共感を感じ、彼”バレンチーノフ=ウラジミール・アレクサンドロビッチ”の口元に苦笑が浮かぶ。 だが、それも一瞬のことだ。 (マリア・・・・・・・。) 自分でも未練がましいと思いながら、今し方出てきたドアを振り返る。その向こうにはマリア・タチバナがいる。 故郷を捨て異国へと流れてきた彼にとって、彼女だけが最後の切り札になるはずだった。 (今日は駄目だったが・・・・次は必ず・・・。) 頼る者のいないこの国で彼がのし上がるためには、あらゆる手段を使わなければならない。例えそれが親子兄弟であろうとも利用できるものは利用する。 そう、あの時のように・・・・・・。 (ユーリー・・・か。) それはかつての戦友であり、マリアがただ一人愛した男の名。 そして、彼が罠にかけ殺した男でもある。 (今度こそ俺はうまくやって見せる!!) 苦い思いを噛み殺し、立ち去ろうとしたその時。 カチリ・・・ ドアの開く小さな音が聞こえた。 「!?」 肩越しに振り返った彼の目に、ドアに身を隠すようにして、彼の背中を見つめるマリアの姿が写る。 「マリア・・・・・・?」 「・・・・・・・・・・・。」 無言で見つめる彼女の目には、哀しみとも憐れみともつかない光が揺れている。 「・・・・・・・・マリア。」 「バレンチーノフ少尉・・・・・。」 数瞬の沈黙の後、ためらいながらマリアが口を開く。 「少尉・・・あンた・・・。」 「?」 「背中が煤けてるぜ。」 「!?」 ・ ・ ・ ・ ・ パタン・・・・ 呆然と立ち尽くす彼を残して、静かにドアが閉まる。 「マ・・・マリア・・・。」 掠れる声で彼女の名を呼んだ瞬間、狂おしいまでに激しい思いが、彼の口からほとばしり出た。 「マリアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! くれやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! お前の運をワシにくれやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 (おわり) |
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