「その名を呼べば・・・」


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 死と破滅の気を身に纏い、その男は静かに立っていた。
 その足元には軍服に身を包んだ、長い銀髪の男が息絶えている。

「お、お前は・・・何者・・・だ。」

 金縛りになりそうな圧倒的な殺気に、辛うじて言葉を絞り出した大神の全身に冷や汗が滲む。

「・・・・・・・・・・・・・。」

 その大神の姿を鬼面の奥から一瞥すると、男は妖力を高めながら名乗りをあげ・・・ようとした。

「・・・おに・・・・・・・。」
「ワタシ知ってマーーース!!」
「「「ええっ!?」」」

 織姫の突然の言葉に、その場の全員が驚きの声をあげる。

「知ってるって・・・。織姫さん、あの人と知り合いなんですか!?」
「知り合いなんかじゃありまセーーーン!!
 でも、ウワサは聞いたことが有りマーーース。」
「噂?噂って一体・・・。」
「フッフーーーーン!!
 あなた達、ニッポンジンのくせにそんな事も知らないんですか?
 良く見なサーーーーイ!!」

 そう言うと、織姫は男を指差し説明を始めた。

「イイデスか?あの面、あのキモノ、そして、あのカタナ!!
 間違いありまセーーーン。その男は・・・・・。」
「男・・・は?」
「桃太郎侍に決まってマーーース!!」
「「「「ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうっ!!」」」」

 大神、さくら、アイリス、そして、桃太郎侍と呼ばれた本人をも交えたツッコミが、銀座の街に響きわたる。

「私はそのような者では無いっ!!私の名は・・・・・・・・。」
「言い訳は聞きマセーーーーン!!
 どんなにごまかしても、これには耐えられないはずデーーース!!」

 そう言うと織姫は、大神達を集めて何やら指示を与え始めた。

「いいですか皆さん?いきますよーーーーっ!!
 せぇの・・・・・・・・・。」
「「「「ひとぉぉぉぉつっ!!」」」」
「なっ?何ぃっ!?」
「「「「ひとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉつっ!!」」」」
「やっ、やめんかっ!!」
「「「「ひとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉつっ!!」」」」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「「「「ひぃとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉつっ!!」」」」
「ぬぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

ぷちっ・・・

「人の世の生き血をすすり!!」
「「「おおぉっ!!」」」

 セリフと共に見栄を切る男の姿に、織姫を除く一同から驚きの声があがる。

「まだまだこれからデーーース!!続いていきマーーース!!」
「「「おうっ!!」」」

 織姫の合図に、再び大神達が叫ぶ。

「「「「ふたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつっ!!」」」」
「不埒な悪行三昧!!」

 今度は一瞬のためらいも無く、台詞に合わせて刀を抜き放ち、二、三度振って見栄を切る。

「「「「み・・・。」」」」
「三つ醜い浮き世の鬼を!!」

 ついには台詞の全てを自ら言い放ち、その場で一回転する。

「退治てくれよう、桃太郎ォッ!!」

ザシャァァァァァァァァァッ!!

 腰を落とし両腕を大きく広げ、ポーズを決めるその手には、しっかりと鬼の面が握られていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 先刻迄の騒ぎが嘘のように、静かな時が流れる。

「・・・・・・・・・・・はっ!?」

 いち早く回復したのはさくらだった。
 男の素顔、そこにこの世に在る筈の無い者の面影を見、大きく見開かれた目に涙が溢れる。

「・・・お・・・とう・・・さま・・・・・・・?」
「さく・・・ら・・・・。」
「お・・・・おとうさまぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 男の口から洩れたその声は、間違い無くさくらの父。今は亡き真宮寺一馬の物だった。

「お父様・・・何故です?何故こんな事に?」
「ある者の反魂の術で蘇った私は、この面の呪縛によって操られていたのだ。」
「そんな!!」
「だが、さくらよ。お前達の強い心が面の呪縛から私を解放してくれた・・・。
 強く・・・なったな。」
「お父様・・・。」

 感動的な父と娘の再会に、大神達の目にも涙が溢れる。

「大神さん、みんな。ありがとう!!」
「良かったね、さくら。」
「さくらさん・・・。」
「さくらくん。
 さあ、行こう!!これからが最後の戦いだっ!!」
「はいっ!!」

 華撃団の正義の心が、一馬を操る邪悪な力を退けた!!

 だが、真の敵との戦いはこれからだっ!!

 帝都に平和な日々が戻るその日まで!!

 戦え我らの帝国華撃団!!

(完)

 ひたすら盛り上がる大神達の姿を、一群の男女が物陰から見つめている。
 年齢性別は違えども、その心には同じ気持ちが渦巻いていた。

『出番を飛ばすなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

(おしまい)

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