太正14年某月、帝撃作戦指令室。 帝国華撃団、花組の面々が出動後のミーティングを行っていた。 「それじゃ、最後に大神君から何かあるかしら?」 あやめの話を聞いているのかいないのか大神の返答はない。 腕組みをしたまま黙りこくっている。 「大神くん?」 部屋中の視線が大神に注がれる。しかし大神が喋り出す気配一向 にない。 息を呑む一同。と、次の瞬間。 「すぅ〜〜〜〜〜〜っ、すぅ〜〜〜〜〜〜っ、むにゃむにゃゥB」 ずっこける一同!! 「くぉらぁぁぁっ、大神ぃ〜〜〜〜っ!!!」 米田の一喝にハッとする大神がすかさず叫んだ。 「すみれくんを必ず取り戻すぞ!」 ちなみに、秋祭りをむかえ、レニも心をを開き打ち解けてきたこ の事である。 呆れ顔ですみれが毒づく。 「私ならとっくに戻っておりますけど?」 さらに隊員達が続き追い打ちをかける。 「何だよ隊長、気合いが足りねーぞ!」 「お兄ちゃん、寝るときはお部屋で寝なくちゃだめだよ〜♪」 「やっぱりニッポンの男、だらしが無いで〜〜す!!」 「でも戦闘後の休息は大事だ。」 「でも今は別よ、それくらいわかるでしょ、レニ?」 かろうじて出されたレニの助け船もマリアの一言でタイタニック。 そんな中さくらは、というと何やらご機嫌だったらしい。 笑いをかみ殺し大神を見つめていた。 「来月にはあの首にうふふっ♪」 どうやら違う事を考えていたのか。 (大神はん、ひょっとして・・・) 何かに気づいた紅蘭の眼鏡が光った。 しかしそれに気づいたのは誰もいなかった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「ふう・・・」 大神は支配人室から出てくると大きくため息をついた。 無論、先ほどの失態をきつ〜く米田に叱られたのである。 「治にあって乱を忘れず。居眠りなんてもってのほかだ!」 じゃあ昼間っから酒のんでいる自分は・・・と言いかけようとした。 が、愚問だったことを思いだし、その言葉を飲み込んだ。 そう、自分は帝国華撃団の隊長なのだ。その任務をまず全うするべきだ、と思うとゲージが右の端まで青くなった。 「いよぅ、大神ィ〜〜〜!俺は幸せだなぁ〜〜〜。」 「か、加山か。どうしたんだ?」 どうしてこの男はいつも帝劇をフラフラしているのだろう? 思いたくはないが、もしかしたらこいつもスパイ? 考えを巡らす大神。そんな疑問をよそに加山が続けた。 「自分の主張がみんなに認めてもらえる。俺は幸せだなぁ〜〜〜」 「なにが言いたいんだ?」 「月夜のギター、といえばわかってもらえるかな?」 「ま、まさか、おまえ!」 「その通り!選ばれし者だけが得られる幸福を俺は知っている。いやぁ〜〜、俺は幸せだなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 「た、頼む!俺にそれを見せてくれないか!このままだと仕事が手につかなくて・・・」 大神が言いかけたその時、地下から足音が聞こえてきた。 「いたわ!斧彦、菊之丞、こっちよ!」 「ほんと、お待ちになってぇ〜〜〜〜〜〜」 「ふ、二人ともまってください!」 けたたましい勢いで薔薇組が突進してきた。 「そ、それでは大神、また会おう!とぉ〜〜〜うっ!」 「あ、加山っ!」 そそくさと逃げ出す加山。 薔薇組のめざす相手は加山だったらしい。目標を見失った三人は大神を新たな標的に変更した。 「大神少尉。あの方をご存じなの?」 清流院琴音が口火をきった。二人も続けて話し出す。 「う〜〜〜ん、一郎ちゃんったらイジワルなんだから。なんで早くいってくれなかったの〜〜ん?」 「で、でも・・・僕は少尉一筋・・・ですから・・・」 「あ、一人だけいい子ぶちゃって、一郎ちゃんにアピ〜ルするつもりねっ!」 「そんな・・・そんなつもりじゃ・・・」 加山も不思議だが、この3人も不思議だ、と大神は思ったが、もちろん口にだしては言えなかった。 「やめなさい!二人とも。失礼しました、大神少尉。」 「いえ・・・」 「我が愛と美の秘密部隊、薔薇組にとって美の追求は大切なこと。それであのお方の素性が知りたいのです。」 大神の脳裏にふと、間がさした。加山に目を向けさせれば、少しはマークが甘くなるかも知れない。第一このままでは落ち着いて風呂にも入れない。 「あいつは、自分の海軍学校の同期で、加山雄一といいます。」 自分の身の安全のため、友人を売る大神。君は「走れメロス」を読んでいないのかっ! 「で、配属先はどこなのかしら?」 「それが、自分にもさっぱり・・・聞こうとするとうまくはぐらかされて・・・」 「フフフ。おもしろくなってきたわ。薔薇組の全能力を使って、捜し出すのよ!地下にもどって作戦会議よ!」 意気揚々と戻ってゆく薔薇組。まさに活気に満ちあふれる後ろ姿に大神は加山に心の中で謝りつつ、すでに別のことを考え、行動を始めた。もしかしたら売店に加山の持っていた「アレ」があるかも知れない。 「あ、大神さん!いらっしゃい!ブロマイドを買いにきたんですか?ご一緒にスマイルはいかがですか!」 「や、やあ、つぼみちゃんか。」 「そうです!あ、スマイルは0銭ですから!」 そりゃ時代背景が無茶だろうと思いつつ、大神はこの時しまった、と思った。売店の高村椿は極秘任務で不在だったのだ。 筆者もこの時しまったと、思った。あ〜〜気づいてよかった。もう少しで嘘つき!と呼ばれるところだった。 「い、いや、つぼみちゃん、お仕事頑張ってね。」 あわてて売店をあとにする大神。変に勘ぐられては後々困る。たぶんつぼみだと由里のところに情報が筒抜けになってしまうだろう。それだけはさけたかった。 大神の受難はまだ続くことになってしまった。 <<後編へ>> |