七月某日、陸軍病院近くの路上。 数人の青年将校たちが、二人連れの男女を取り囲むようにして立っていた。 将校たちのリーダーは、帝国陸軍少佐・天笠士郎。 一方、彼の前に立つ男の名は…… 「……帝国海軍少尉、大神一郎だ!」 「ほう……貴様が大神か。名前は聞いているぞ。帝国華撃団とかいう、女ばかりの腐れ部隊の隊長というのは、貴様か。」 「な、何だと!? 誰が『ドキッ! 女だらけの水泳大会』だっ!!」 「言っとらんわ、そんなこと!」 「ちょっと待って下さい! それじゃ、あたしは『水中騎馬戦の時、分割画面で歌っている新人アイドル』だって言うんですか!! いくらなんでも失礼じゃありませんか!?」 「言っとら〜〜〜ん!!」 「くっ……俺だけならまだしも、さくらくんまで侮辱するとは!!」 「だからっ! その女が勝手に言ったんだろうがっ!! ……とにかく、だ。……昼間から女を連れてチャラチャラと出歩き……あまつさえ、我々の行く手をさえぎるとは言語道断!!」 「フッ、甘いな……俺が本気でチャラチャラしたら、こんなもんでは済まんぞ?」 「大神さん、見せてやりましょう! 軟派全開モードのあたしたちの、ベタベタした見苦しいカップルぶりを!!」 「やめんか、言ってるそばから!! ……ええい、貴様らのような奴らが日本を駄目にしているのだ!! よって、鉄拳制裁を加える! 大神、歯をくいしば……」 「大神パーンチ!!」 「ぐはぁっ!?」 「……天笠とやら、暴力は感心しないぞ。むやみに拳を振るっても、何も解決しないということがわからないのか!?」 「さ……先に殴っておいて何をぬかすっ! ……も、もはや勘弁ならぬ!! この軍刀のサビにしてくれるわっ!!」 「待つんだ、天笠! ここで騒ぎを大きくすると陸軍と海軍の問題になる。米田支配人が不在の今……もめ事は俺にとってまずい。おとなしくその軍刀で自害するんだ!!」 「ムチャクチャなことを言うなあぁぁっ!! なんで俺が自害などせにゃならんのだああああぁぁぁっ!?」 「ちっ、往生際の悪い奴だ。……仕方がない、こうなった以上、相手をするしかなさそうだな。」 「……ほう。貴様のようなふぬけな男に、刀を抜く度胸があったとはな。……面白い、1対1で勝負してやる!! いいか、皆、手を出すんじゃないぞ!」 「くっ……1対1とは、なんて卑怯な!! 大神さん! あたし、加勢します!!」 「そっちのほうが卑怯だろうがあぁぁっ!! なに考えてんだ!!」 「さくらくん。気持ちは嬉しいが、ここは俺にまかせてくれないか? ……万が一、俺が負けそうになった時、すかさず助太刀してくれさえすれば、それで十分だから……」 「大神さん……立派だと思います!!」 「どこがだああぁぁぁっ!! 卑怯者カップルか、貴様らはっ!?」 「な、何だと!? 誰が『伝説の秘境に白いカピバラを見た!?』だっ!!」 「言っとらあああぁぁぁんっっ!!」 ……こうして、二人の対決はいつ終わるとも知れず……いや、いつ始まるとも知れず続いた。 ……一方その頃、停車中の蒸気自動車の中では、出るタイミングを逸した京極慶吾が、窓の外を眺めながら一人つぶやいていた。 「……あれが大神一郎少尉ですか。いいボケを……していますね……」 あとがき すみません、ご覧のとおり、ただ今絶好調の『大神さんのお部屋』シリーズの影響受けまくりです。 だって、面白いんだもん。 という訳で、南国華撃団さん、ごめんなさい!! では。 |