「では、これより黒鬼会定例集会を始める。」 帝都の地下深く、悪夢の世界を思わせる空間に、京極慶吾の声が響く。 「……時に、木喰。今日は何か話があると聞いたが?……」 「ふおっ、ふおっ、ふおっ。さよう。この木喰、ついに華撃団に対する必勝の戦術を編み出しましたぞ。」 「何!? 『必勝』だと?」 驚く京極に、鬼王がそっと耳打ちする。 「……京極様。『必勝』とは『必ず勝つ』という意味にございます。」 「解説するなあああぁぁっ! 馬鹿にしとるのか、貴様は!?」 こめかみに血管を浮かび上がらせて、京極が怒鳴る。 「……もう良い、お前は黙っとれ! ……木喰、話の続きを聞こう。その『戦術』とは?」 「はっ。『戦闘の具体的な術策』のことでございます。」 「知っとるわぁぁっ! その内容を聞いておるのだぁっ!!」 「ふおっ、ふおっ、ふおっ。それならそうと言うてくだされば良いのに、京極様も人が悪い。……では聞かせてしんぜよう。なに、簡単なことじゃ。これまでバラバラに戦ってきた我ら五行衆が、協力して事にあたる。……これがわしの作戦じゃ。」 とたんに、五行衆の面々は騒然となった。 「な、なんと! つまり、我ら5人が一緒に出撃する、ということですか?」 「す、すげえ……そんなこと考えつかねえぜ、普通!」 「その手があったとは……しかし、そんな凶悪な作戦を考え出すなんて……味方とは言え、恐ろしい奴……」 「ああ……あたしも正直、ゾッとしたよ……」 「ふおっ、ふおっ、ふおっ。……いかがでございますかな、京極様? 」 「ふっ……よくぞ考えた、と言いたい所だが……愚か者め! その作戦には致命的な欠陥があるわっ!!」 「そ、そんな馬鹿な! わしの計算に間違いはないはず……」 「まだわからんのか! では、花組の人数とわれらの人数、比較してみるがいい!」 その言葉に従い、さっそく五行衆の面々は計算を始めた。 「え〜と、花組は確か9人だよな。……俺たち五行衆って、何人だっけ?」 「5人に決まってるでしょ! 本気で馬鹿ね、まったく。」 「え〜と、9人と5人を足すと、ひい、ふう……ちっ、指が足りねえな。おい、土蜘蛛、協力しろ。」 「そこで足し算してどうするんだよ!」 「ちっ、ケチケチすんなよ! 27本も指があるくせに!」 「なんなんだ、その半端な本数は!? 30本だよ、30本!」 こうしたいささかの混乱はあったが、やがて全員が計算を終えた。 「くっ……花組は9人、我々は鬼王を入れても6人……3人もの差があるのか……こ、これは計算外じゃ……」 「わかったか! その戦術では勝てん! ……さあ、次の議題に移るぞ。」 ……こうして、木喰の提案は却下された。 惜しい! 実に惜しい!! 今回こそ、野望に一歩近づいたかと思ったのに! だが、くじけている暇はない。 負けるな、われらの黒鬼会! がんばれ、僕らの京極慶吾!! ……とりあえず、算術の勉強が急務だ!!! 〜 おわり 〜 |