黒鬼会のうた


「では、これより黒鬼会定例集会を始める。」
 帝都の地下深く、現世とも冥府ともつかぬ空間に、京極慶吾の声が響く。
「時に、木喰。今日は何やら良い知らせがあると聞いたが?……」
 「ふおっ、ふおっ、ふおっ。さよう。この木喰、遂に華撃団の強さの秘密を掴みましたぞ。」
「何! それは本当か? ……して、その秘密とは?」
「それはズバリ、『歌』じゃ。」
「『うた』?」
 さすがの京極も、その意外な言葉には虚を突かれたようだ。木喰が得意げに説明する。
「そう、歌じゃ。歌には強力な言霊が宿る。歌舞音曲は霊力を高める絶好の手段なのじゃ。……しかも、勇ましき歌には、歌い手の結束力を強め、士気を高める力もある。」
「なるほど……それが歌劇団でもある奴らの強さの秘密か……」
「確かに、『激!帝国華撃団』はついつい口ずさんでしまいますな。フンフンフ〜ン、フフフフフ〜ン……」
と、鬼王。
「歌うな! 敵の歌を!! ……しかし、木喰の意見には一理ある。となると、我ら黒鬼会にも団歌が必要か……」
「ふおっ、ふおっ、ふおっ。抜かりはござらん。既に我ら五行衆、それぞれ一曲ずつ準備ずみ。すべては計算どおりじゃ。」
「なるほど、手回しがいいな。良かろう、順番に歌ってみろ。採用になった者には臨時手当も考えるぞ。」
「はっ! では私から……」
 真っ先に名乗り出たのは土蜘蛛である。木喰の手から蒸気マイクを受け取った彼女は、いつものハスキーボイスとは似ても似つかぬ、可愛らしいファルセットで歌い始めた。

 『大神なんて こわくない
  こわくないったら こわくない
  大神なんて こわくない
  ファ・ラ・ラ・ラ・ラ☆』

「……ちょ、ちょっと違うのではないか? なんというか、もうちょっと、こう……い、いや、まあいい。次は誰だ?」
「クックック……ではこの火車が……」
 相変わらず意味不明の笑いを浮かべた火車が、マイクを握った手の小指を立てながら歌う。

 『あたたかい 友の情けも
  恋愛の あつい想いも
  知らないで 育った僕は ニヒリスト

  強ければ それでいいんだ
  友達も 無くていいんだ
  ひねくれて ゴミを燃やした
  僕なのさ……』

「陰気臭いわっ! そんなので士気が高まるか!! ……もう良い、次!」
「ふん、なってねえな。歌ってのはこう歌うもんだ! 聴けっ!! この金剛の魂のリサイタル!!」

 『お〜れ〜は 金剛〜
  ガキ大将〜』

「やめろおぉぉぉっ!!」
全員が耳を押さえて絶叫する。
「ええっ、もう終わりっスか?!」
「そもそも歌になっとらん!! 第一『ガキ大将』じゃないだろ!! 次だ、次!!」
「まったく、あんたは何ひとつまともにできないんだから……あたしがお手本を見せてあげるわ。」
 そう言って水狐が歌い始めたのは、行進曲風の軽快な歌だった。

 『ぼくらの組織の リーダーは
  京極 京極 京極慶吾☆

  影山サキの 正体は
  黒鬼会 黒鬼会の 水狐ちゃん☆』

「自分からバラしてどうする、バラして!! 次っ!!!」
「ふぉっふおっふおっ、やはりわしが出るしかないようじゃの。これもまた計算どおりじゃ。……ではミュージックスタート! ポチっとな。」

 『あのね武蔵はね
  鳥居の魔法陣で 呼び出すんだよ
  む、む、む、む、む、む 武蔵はね
  最強なんだ 最強なんだ
  最強なんだ けれど
  意外と中は 弱点だらけなのさ
  だから内部に侵入 しないでね
  特に御柱 とっても弱いんだってさ』

「だぁぁかぁぁらぁぁぁっ!! バラすなと言っとろうがぁぁぁっ!!!」
 半狂乱となった京極をなだめるように、鬼王が静かに口を開いた。
「京極様、ここは私におまかせを。」
「おおっ! 鬼王、信じて良いのだろうな?」
「もちろんです。お聴き下さい!」

 『美しい 娘になれと
  願いを込めて 父さんが
  付けた名前だ 真宮寺さくら……』

「なんで貴様の娘自慢を聴かされにゃならんのだぁぁぁぁっっ!!!」
「やはりここは私が……」
「いや、俺がもう一度!」
「それだけはやめろと言うに……」
「一番、火車。『太正枯れすすき』歌います。」
「あ、こいつ勝手に……マイクをよこしな!!」
「貴様ら、いい加減にしろぉぉぉっ!!」

……こうして夜は更けていった。
帝都壊滅の野望は、まだまだ遠い。
負けるな! 我らの黒鬼会!
がんばれ! 僕らの京極慶吾!!

 〜 おわり 〜
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