「あ〜ら、今日のお夕食はさくらさんの手料理ですの?」 帝劇の食堂に神崎すみれの声が響く。 「ええ。田舎の権じいが、大根をいっぱい送ってくれたので、おでんを作ってみました。……皆さん、良かったら食べてみてください。」 「まあ、『田舎』から『大根』を? さくらさんにピッタリのエピソードですわね。お〜っほっほっほ……」 「…………すみれさんは召し上がらないんですね。わかりました!!」 「ちょ、ちょっとさっくらさん! そう慌てるものではございませんわ。私は『さくらさんらしい、ほのぼのとしたエピソードだ』と言いたかっただけですのよ!!」 「……ったくもう。最初っから余計なこと言わなきゃいいんだよ。本当は料理のできるさくらを尊敬してるくせに……全く、おめぇは女の腐ったような女だな。」 「な、な、なぁんですって! カンナさん、男にカビのはえたようなあなたに言われたくありませんわ!!」 「なんだとぉ、このヘチマ女!!」 「もう、二人ともいい加減にしなさい! ほら、ケンカしないで、仲良くいただきましょう。」 「わ〜い、いっただきま〜す!」 「……ふう〜ん、マスタードを付けて食べるんですか〜。面白いで〜〜す!」 「……ますたぁど?……ああ、カラシのことですか。」 「…………芥子。香辛料の一種。アブラナ科の一年草、カラシナの種をすりつぶしたもの。…………」 「ど、どうでもええけど、レニ、ちょっとカラシ付けすぎなんとちゃう? ……そんなん無理して食べたら、ノドに良くないで?……」 「紅蘭さん、レニは別にムリしてる訳じゃないで〜す。レニはワサビでもタバスコでも、顔色一つ変えないで食べるんですから〜〜。」 「そ、そうは言うてもなあ。ノドはうちらの大事な商売道具やし。……そや、レニ、試しにちょっと歌ってみ? ノドの調子、みたるさかい。」 「…………了解。」 レニは箸を置いて立ち上がると、『青い鳥』の挿入歌、『希望』を歌いはじめた。 『カラシ食って 涙をこらえれば のどが痛くて………… げほ、げほっ!!』 「メチャメチャ無理しとるんやないかい!!!」 …………おしまいです。 |