エボニー・エンジェル


SS「エボニー・エンジェル」

初めに・・・・・・

件の山崎SSを書いてたら「対降魔部隊SS」になっちゃったので没になりました。(笑)

シリアスなSSを書こうと思ったんですが・・・・。
感動の粋には到底持って行けません。かといって笑えるか?と言うと自信も無いんですが。
ま、どのみち駄作SSです、最後までお読みいただければ幸いです。

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大正14年・秋。赤坂地下、黒鬼会本部。

京極始め、黒鬼会のメンバーが一堂に会していた。
気難しい顔をしながら京極が口を開いた。

「今日諸君に集まってもらったのは他でもない、我が黒鬼会の予算問
題についてだ。」
「予算、ですか?」

鬼王が改めて聞いた。

「うむ、我らの存在は決して表に出てはならん物。」
「つまり表立っての資金の調達も出来ない、と」
「そのとおりだ。米田が復活してからと言うもの、陸軍内でも監視の目
が光っており、そうそう自由も効かなくなってきている。」

確かに表立ってではないにせよ、京極の自由が陸軍内部でも規制されつ
つあった。その向こうには確かに米田や山口の姿が見え隠れしていた。
五行集は一様に思案しだした。
そんななか、金剛が口火を切って言った。

「京極様!俺様の腕力でもって帝鉄工事のバイトでもして来ましょうか?」
「馬鹿だねぇ、帝都発展の手伝いをしてどうするんだい?」
「んだとぉ!土蜘蛛ォ!なら何かいい考えでもあんのかよぉ!」
「はん、アタシは狩人だよ!金もうけなら商人に聞いとくれ。」
「商人?」
「計算じいちゃんが得意なんじゃないかい?こういうのはさ!」

多少の嫌味は込められていたであろう言葉であったが、木喰は物ともせず、
微笑を浮かべながら話を始めた。

「ふぉっふぉっふぉっ、こんな事もあろうかと、考え事をしておいてよか
ったわい」
「なぁんかいつもどっかで聞いているセリフみたぁい・・・・。」
「発明家と言うのは常に先を考えておくものじゃよ?」
「聞かせてもらおうか?木喰。」


木喰の考えとはこうだった。

目には目を。
華撃団に対抗して華のある女性グループを作って人気を集め、ブロマイド
などの収入から予算を計上する、と言うものであった。
これならば軍の予算を工作することなく資金を得る事が出来る。
得意げに語る木喰。

「して、その女性は一体どうするつもりか?」
「難儀する事は有りませんぞ。ここに2人居るではありませんか。」

木喰の視線は土蜘蛛と水狐に向けられた。
鳩が豆鉄砲食らったような顔をして土蜘蛛が怒鳴る。

「なっ、なに考えてんだい!このアタシにそんな事やれって言うのかい!?」
「無論じゃ。」
「馬鹿も休み休み言いなよ!この体でどうしようってのさ!」
「特殊メイクって事にすれば良いじゃろ?タイプの違う2人が組めばヒット
間違い無しじゃ。」
「ねぇ〜、土蜘蛛ぉ、一緒にやろうよぉ♪だってサキちゃんもう出番無いし」

何やら、まんざらではない様子の土蜘蛛である。
水狐に茶々を入れられるが、真剣に怒っている風はなかった。
しかし、真剣に怒っている男が一人。

「納得いかねぇ!納得いかねぇぞ!!」

もちろん金剛である。
彼にしてみれば思いを寄せている水狐が人目に、ましてや他の男どもの好奇
の目にさらされるのが面白いわけはなかった。

「俺は反対だ!」
「なら他に手立てがあるんですか?」

それまで黙っていた火車が割って入った。実は結構乗り気だったらしい。

「大体水狐も水狐だ!俺の気持ちも考えてくれよぉ〜」
「べっつにぃ〜、サキちゃんの心の中にいるのは山崎様一人だもん!」
「あんなやられキャラのどこが・・」

ずごごおおおぉぉぉん

突如、金剛の頭上に謎の御柱が落下した。
それにはこう刻まれた跡があった。


人誅 山崎萌萌団


めったな事は言うものではない。

「そうじゃのう・・。コンビ名は『エボニー・エンジェル』てな所でどうじゃ?」
「黒い天使かぁ・・・。うん、結構良いかもねぇ♪」
「黒?ならブラックじゃないのかい?」
「それじゃ闇の処刑人になってしまうのじゃよ、自転車のスポークとか使ってのう・・・。」

ともかくも、作戦を実行に移す事になった。
金剛をおとりにして帝都に襲撃を掛ける。
そこに2人を派遣して民衆の支持を得ようと言う作戦であった。
一瞬にして満身創痍となった金剛が、しぶしぶアジトから出発していった。


所は変わって大帝国劇場。
程なくここにも黒鬼会の帝都襲撃の第一報がよせられた。
花組への非常召集のサイレンが鳴る。

「大神さん!出動のようですねっ、行きましょう!」
「やだ。」
「何レニみたいなセリフ言ってるんですか!」
「俺は今、椿ちゃんが帰ってきたときに備えてデートコースの選択に忙しいのだ。」

ドガァッ!!

さくらの一撃が綺麗に大神のみぞおちにヒットする。
かわす間もなく気絶する大神。

「・・・あまり困らせないでくださいね♪」

さくらはそう言うと大神の襟首をつかんでズルズル引きずっていった。
あくまで笑顔のままなのが少し恐かった。
そして大神を汚れた洗濯物のようにダストシュートにほうり込む。
そのまま舞台は地下作戦室へ。

「そんなわけで大神ィ、よろしく頼むぜ!」
「了解しました!よし・・・帝国華撃団・花組、花見の準備をせよ!」

ガタガタガタッ!
ずっこける一同。さくらがたまらずつっこむ。

「なんで9月に花見ですか!」
「花見がサクラだと誰が決めた!じゃあコスモスの立場はどうなる!」
「いや、だから・・・」
「ヒガンバナの立場は!菊だってそうじゃないか!!」

ドガァッ!!

「みんな・・・有無を言わさず轟雷号に詰め込みましょう♪」
「そそそ、そうね・・・・。」

この日から花組のさくらに対する態度が少し変わったらしい。


舞台は変わって上野。金剛が2人の出番を作るおとりとして現れていたのであった。
金剛にしてみたらやっつけ仕事、面白くはなかったが、しかし破壊しているうちに
興がノッて来たらしい。

「はぁーはっはっはっ、すこぶる快調だぜぇ!華撃団でもなんでも来いってんだ!」
「呼んだか?・・・うっぷ。」
「なっ・・・?馬鹿な!!」

「「「「「「「「「帝国華撃団、参上!! 」」」」」」」」」

「こいつは誤算だったぜ!まさかこいつらの方が早く来ちまうとは・・・」
「轟雷号の速さを・・・・うう、気持ち悪・・・・おぇぇぇ。」
「大神さん!」

それ以上何も言えなくなる大神。沈黙する白色の光武・改。
いぶかしむ金剛にさくら機が対峙する。

「よくも大神さんを・・・・・・、あたし、許さない!!」
「何言ってやがるんだ!勝手に自滅してんだろが!」
「問答無用!抜きなさい、金剛!!」

その時である。
その場を征するかのような声が近くの建物の上で響いた。

「「ちょっと待ったあ!」」

掛け声も高らかに2つのシルエットが浮かび上がる。
片や銀髪に褐色の肌、片や黒髪に白い肌。
対称的な2人が建物の上にその姿を現したのだった。

「てめーらは、いったいーなにものなんだー?」

恐ろしくわざとらしいセリフが金剛の口から発せられる。
それに呼応するかのように褐色の肌の女性が口を開いた。

「アタシの名は!つち・・・・・」
(し〜〜っ!本名言っちゃだめじゃない!)


水狐が土蜘蛛の口をあわてて押え込んでささやいた。
エボニー・エンジェルの事をすっかり忘れていた土蜘蛛。
そこへ、いつのまにか復活した大神が追求する。

「つち・・・・・?何だ?分からん・・・・。」

あせる二人。時間だけが、ただ過ぎ去っていくように思えた。
ここ一番で土蜘蛛が口を開き希代のアドリブを発した。

「アタシたちは『ツッチィー・ペア』!!」
(バッ、バレバレじゃぁねぇかぁ!!)

金剛の心配をよそに大神が続ける。

「ツッチィー・ペアだとぉ?」
「いかにも!(汗)あたしたちはこの帝都を騒がすものはゆるさないんだからぁ」

半ばヤケになりながら水狐が続けたが、花組の面々はうすうす気が付きだしたようだった。
ただ一人を除いて。

「なんて言う事だ・・・。俺達のほかにも帝都を守る存在が有ったなんて。」
「何言ってんですか!あれは黒鬼会の!」
「さくらくんこそ何言っているんだ、良く似ているがあの二人はサングラスを掛けているじゃないか! 」
「そ、そんなベタなボケ・・・第一水狐は見間違う事はないんじゃないんですか?」
「なんでだい?」
「忘れたんですか?罠だとも知らずにあちこち触ったり・・その揉んだり・・・とか・・・」
「触ったり・・・何だい?」

グワッキィィィィィン

「な、何だい、いきなり!」
「もう知りません! 」

ともかく、そんな花組をよそにツッチィーペアvs黒鬼会の戦いが幕を開ける。

「この帝都をそんな機械で騒がすやつはゆるさないよっ!」
「なぁんだとぉう?上等じゃねえか!」
「行くよ、サッキー!」
「うん!」

なんだかんだ言ってノリノリだなぁ、と言う言葉は飲み込んだ。
生身で脇侍の中に突っ込んでいく2人。
鮮やかな身のこなし。それは見る者全てを魅了するかのようだった。
野次馬たちはみんな目がハートになっている。
2人に対峙した脇侍がまるで打ち合わせ済みのように倒れていく。

「ふぉっふぉっふぉっ。ワシの計算通りの動きじゃ。」
「負け方だけ計算通りじゃ困るんですがね?」
「何か言ったかのう?最近耳が遠くなってのう・・・」

黒鬼会本部で様子を見ている木喰に火車が皮肉ったが木喰の老人力は侮れなかった。
そうこうする間に2人は金剛と対峙していた、が。

「うわぁぁぁ。やーらーれーたー。」
「ふん!アタシ達の相手にゃぁ10年早いんだよ!」
「おととい、いらっしゃーい♪」
「こ、こ、こうなったーらー、てっ、てったいだぁー。」

「・・・・・あの芝居の下手さは計算外じゃ・・・・。」
「同感ですね。あれだったらまだ私の方がましと言うものです。」

そんな予定調和の戦いの向こう側でさくらの怒りはまだ収まっていなかった。

「まったく、どっちも馬鹿らしくって付き合っていられませんわ。」
「同感やなぁ。なんかあほらしゅうなってきたで。」
「隊長さんは自業十徳ナイフって奴デース。」
「織姫、それを言うなら自業自得よ。」
「自業自得。身から出た錆とも言うかもしれないね。」
「やっぱりレニって物知りだねぇ♪」
「どうでもいいけどあたい、腹減っちまったなぁ。」

どうやら外野は気楽だった。
しかしそんな花組を、いや大神を、2人が狙おうとしていた。

「今がチャンスだねぇ。隙を突いてあの隊長を倒せば・・・・。」
「そしたら大手柄だねぇ♪」
「牛鍋も、もっと良い肉になるかもね。」
「デザートにアイス付くかなぁ・・・。」
「さて、じゃあそれを現実にするとしようかねぇ。」

魔装機兵は無いが、逆に虚を突いて行動する事が出来る。
サングラスの下の土蜘蛛の目は確かに喜びに満ちていたのかもしれない。
しかしその時である。

「桜花放神ーーーーー!!」
「みっ、味方に打つなぁぁっっ!!!」

キレたさくらの一撃が大神の光武・改に炸裂した。
蒸気を吹き出して動きを止める光武・改。
たまらず大神が飛び出した。無論土蜘蛛はこの瞬間を逃がさない。

「これは好都合だねぇ・・・。」
「まっ、まさかさくらくんが本当に打ち込んでくるとは思わなかった・・・・。」

大神めがけて土蜘蛛が飛び出す。
音も立てない。むしろ魔装機兵での戦いよりも手慣れていただろう。
確実にその掌の剣は大神の急所に向け振り下ろされようとしていた。

(もらった!!!)

そう確信した瞬間。

何の気無しに大神が土蜘蛛の方に向かって振り向いた。
単なる偶然だったのか、大神の能力だったかは分からない。
しかしこの瞬間、土蜘蛛の動きが止まってしまった。

「こっ、こいつは・・・・・!?」
「お、お前はやはり土蜘蛛・・・・!?」

思えば標的にしていたのはいつも光武・改だった。乗り手の腕に興味はあれど
顔などどうでもよかった土蜘蛛にとって初めて間近で見る大神の顔。
大神にしてもそうだった。近づいて戦っているときには魔装機兵と光武・改が
間を隔てている。
それは正に運命の引き合わせた偶然・・・・・・・・・・・・。

「なんで俺は今まで君の魅力に気付かなかったんだろう・・・・。」
「それはアタシのセリフさ・・・・・・・。」
「土蜘蛛・・・・・・。」
「大神・・・・・。」

二人の影が静かに重なって・・・・

「「んなわけあるかいっっっ!!」」

ごもっとも。
<<劇終>>
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<後書き>

あはははははははははははははっ!!!(大汗)
やっとこ書きあがりました。
さんざんひっぱった割にはクサさむみたいなオチで終わっちゃった♪(核爆)

いやぁ、散々悩んだ挙げ句、土蜘蛛と水狐で「ダーペア」と思ったのは良いんです
が、考えてみたらすでに有ったし。(笑)

発想は良かったとしても、オチを考えずに書き始めちゃったんでどうにも収拾が
付かなくってダーペアネタも消化不足になっちゃいました。(汗)

んでも、これ以上は現時点でどうにもならんです。精一杯。
わずかでも楽しんでいただけたら幸いです。
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